大阪都構想は福祉が後退されるのは間違いない!?

 大阪市聴言障害者協会は、2020年10月6日の幹事会において、公開質問状を全員一致で承認して、2020年10月7日大阪市長宛に『大阪都構想制度案に関する聴覚障害者福祉施策等について』の公開質問状を提出しました。質問内容は次のとおりです。
 大阪市からの回答は、2020年10月26日までとお願いしています。いただいた回答は、ろうあ大阪12月号に掲載する予定です。
 大阪市を廃止し、4つの特別区に再編する大阪都構想は、福祉が後退される心配な面があります。また、隣接する周辺の市も議会の承認のみだけで特別区に移行できますので、大阪市の問題だけでなく大阪府全体の問題となります。大阪府民も安心できません。
 大阪市民のみなさま、11月1日の住民投票は、福祉が進展するか後退するか決まる日なので、是非投票へ行きましょう。
・「ろうあ大阪」号外(2020.10.19発行)


2020年10月7日

大阪市長
 松 井 一 郎  様

大阪都構想制度案に関する聴覚障害者福祉施策等について(公開質問状)

大阪市聴言障害者協会
会長 廣田 しづえ

拝啓
 平素より、聴覚障害者福祉に対しましては格別なご理解とご支援を賜り厚くお礼申し上げます。
 11月1日には都構想を巡る住民投票が実施されようとしております。都構想につきましては聴覚障害者福祉に関わる施策等がどのように変わるのかよく分からないことも多く、不安に感じているところです。
 つきましては、お忙しいとは存じますが、下記の質問についてご回答、ご説明をお願い申し上げます。ご回答は10月26日(月)までに、大阪市聴言障害者協会事務所まで文書及びメールにてお願い申し上げます。なお、公開質問状とご回答は機関紙「ろうあ大阪」(公益社団法人大阪聴力障害者協会発行)紙上にて掲載を予定しております。

敬具

1.一般財団法人大阪市身体障害者団体協議会について
 現在、一般財団法人大阪市身体障害者団体協議会(以下「市身協」という。一般社団法人大阪市肢体障害者協会、一般社団法人 大阪市視覚障害者福祉協会、大阪市聴言障害者協会で構成)は市内24区の障害者団体で構成されており、障害者の社会自立のために大阪市からの委託事業を実施しています。また大阪市障害者施策推進協議会にも参画、大阪市の障害者施策推進に力を注いでいます。
 大阪市が廃止され、4つの特別区に分割されることで、特別区間の共通性・連携が失われると同時に地域差が生じてきます。大阪市が築いてきた障害者施策は市身協が各区に生じる地域差をカバーするなど努力を続けてきたこそ、成り立ってきたといえます。この実績を踏まえて障害者団体の在り方について考えをお聞かせください。

(大阪市回答)
 一般財団法人大阪市身体障害者団体協議会におかれましては、本市障がい者施策推進協議会にも積極的に委員として参画いただいており、障がい者施策の推進に大きく寄与していただいているところです。
 障がい者団体につきましては、特別区に移行する場合は、それぞれ障がい者団体において検討されることとなりますが、特別区設置準備期間中に、障がい者団体としっかり連携して、活動の低下につながることのないよう、取り組んで参ります。

2.手話奉仕員養成講座等について
 手話奉仕員養成講座(初級、中上級)・聴覚障がい者コミュニケーション支援事業・社会参加促進事業、更生訓練事業等は市身協が大阪市から受託し実施しています。特別区に移行した場合でも同様の事業が継続され、同様の予算が確保されるのでしょうか。

(大阪市回答)
 大阪市身体障害者団体協議会へ委託している手話奉仕員養成等事業、聴覚言語障がい者コミュニケーション支援事業、障がい者社会参加促進事業につきましては、地域生活支援事業に位置づけされている市町村の必須事業であるため、特別区に移行した場合につきましては、特別区で選ばれた区長と区議会のもと、障がいのある方への必要なサービス提供が行われるよう、引き継いで参ります。なお、特別区設置準備期間中に検討するにあたっては、財源確保に努力して参ります。

3.聴覚障がい者コミュニケーション支援事業
 当会は大阪市に対して市内に居住する聴覚障害者の情報コミュニケーションを保障するために、各区役所に対面での手話通訳者を設置することを求めていますが、まだ実現していません。現在は遠隔手話通訳サービスとしてタブレットが配布されていますが、これは緊急事態時に適用すべきで、日常的にはなじまないものです。特別区に移行した場合の手話通訳者の設置について考えをお聞かせください。

(大阪市回答)
 聴覚・言語に障がいのある方々のコミュニケーション手段の確保及び生活相談の重要性については、認識しています。今後とも円滑に事業運営できるよう、努力して参りたいと考えており、特別区に移行した場合につきましては、各区役所での手話通訳者が対応できるよう、特別区設置準備期間中に、検討を進めて参ります。

4.障害福祉サービス事業と介護サービス事業
 障害者の介護サービス(訪問介護等)と障害福祉サービス(居宅介護等)は制度が異なりますが、同じ大阪市が実施しているからこそ、障害者本人の状況を考慮のうえ調整して、本人が望むサービス提供につながっています。
 特別区に移行して介護保険の利用は一部事務組合が担当、障害福祉サービスの利用は特別区が担当した場合は、障害者の実態やニーズに合わせた連携・調整が困難になると思われます。どう調整を図るのかご回答ください。

(大阪市回答)
 障がい福祉サービスと介護保険サービスとの適用関係の基本的な考え方については、障害者総合支援法の規定及び国の通達により介護保険サービスが優先されることとなりますが、介護保険の対象となった方に対して一律に介護保険サービスを優先させることがないよう本人の心身の状況等を考慮した支給決定を行っております。
 特別区に移行した場合においても、適切な支給決定を行うよう、特別区設置準備期間中に検討を進めて参ります。

5.大阪市地域活動支援センター
 大阪市委託事業で公益社団法人大阪聴力障害者協会が実施している「大阪市地域活動支援センターほほえみ」は2007年から年間4500人の利用実績があり、聴覚障害者同士が集い安心して利用している大阪市だけの事業です。
 手話コミュニケーションを必要とする聴覚障害者は居住する地域の事業所では孤立してしまうため、各区を超えて利用できる事業体が必要です。豊かなコミュニケーション保障と交流の場を保障するとともに、大阪市単位だからこそ成り立つ現在の事業形態を特別区単位で分割するとしたら、人間らしい暮らしを後退させることになりかねません。「大阪市地域活動支援センターほほえみ」はどうなるのでしょうか。ご回答ください。

(大阪市回答)
 地域活動支援センターは、障がいのある方が創作、生産活動、地域交流などを通じて、自立した日常生活や社会生活を営むことができるよう支援するものであり、非常に重要な事業であると認識しております。
 特別区に移行した場合においても、地域活動支援センターの利用を必要となされている方が引き続き利用できるよう特別区設置準備期間中に検討を進めて参ります。

6.聴覚障害者情報提供施設
 聴覚障害者情報提供施設は、身体障害者福祉法にいう身体障害者社会参加支援施設で、国も障害者基本計画(第4次)で政令都市にも設置を促進しています。しかし大阪市は相変わらず未設置のままです(堺市は設置済み)。特別区に移行しても、4つの特別区を基礎とした設置も一方法です。設置について可か不可かご回答ください。

(大阪市回答)
 本市では身体障害者福祉法第34条に基づく施設の役割と同等の事業である手話通訳者派遣事業や手話奉仕員養成事業等を、聴覚障がい者の方に対して実施しているところです。
 現在、聴覚障がい者情報提供施設の設置予定はありませんが、特別区に移行した場合は、特別区で選ばれた区長と区議会のもと、聴覚に障がいのある方への必要なサービス提供が行われるよう、引き継いで参ります。

7.聴覚障害者医療費助成
 障害者が安心して医療を受けるために必要不可欠な「重度障がい者医療費助成」は特別区に移行した場合でも同様の事業が継続され、同様の予算が確保されるのでしょうか。

(大阪市回答)
 障がい者の健康の保持及び生活の安定に寄与し、障がい者福祉の向上を図るための重度障がい者医療費助成制度につきまして、特別区に移行する場合は、制度を所管している部署と連携して、特別区設置準備期間中に、財源確保に向け取り組んで参ります。

8.大阪メトロ・シティバス無料乗車証
 民営事業体である「大阪メトロ」が実施している「大阪メトロ・シティバス無料乗車証」は大阪市交通局(公営)時代から引き継がれており、外出機会の困難な障害者のコミュニケーションの場や情報共有の場づくりに大きく貢献していますが、特別区に移行しても同様の事業が継続され、同様の予算が確保されるのでしょうか。

(大阪市回答)
 本市が実施しております大阪市介護人付無料乗車証等の交付につきましては、障がいのある方の自立と社会経済活動への積極的な参加に大きく寄与しておりますことから、特別区に移行した場合においても、事業の継続は必要であると十分認識しており、特別区設置準備期間中に、財源確保に引き続き努力して参ります。

9.手話言語条例
 「大阪市こころを結ぶ手話言語条例」が2016年1月15日に制定されました。障がい者施策推進協議会には大阪市聴言障害者協会も推進委員として参画し、一緒に施策を進めております。大阪市を廃止し、4つの特別区を自治体として設置する場合、「大阪市こころを結ぶ手話言語条例」は白紙になるのでしょうか。白紙となる場合、新たに4つの特別区として、改めて〇〇区こころを結ぶ手話言語条例の制定を働きかけますので、ご回答ください。

(大阪市回答)
 「大阪市こころを結ぶ手話言語条例」については、2016年1月に制定・施工されており、手話への理解の促進及び手話の普及を行うこととされ、周知・啓発に努めているところです。
 特別区に移行した場合につきましては、現在制定している条例が白紙となるかは不透明な状況でありますが、白紙となっても特別区の各区において、改めての制定が必要であると認識しております。

 以上

【声明】なくしたらあかん大阪市(大阪市聴言障害者協会)