旧優生保護法被害訴訟大阪地裁判決に対しての緊急声明
2020年11月30日、大阪地方裁判所は、旧優生保護法によって1974年に強制不妊手術をされたろうあ者夫婦が、国に国家賠償を求めた訴訟の判決を下した。判決は、日本国憲法の幸福追求権を定めた第13条、法の下の平等を定めた第14条に違反する旧優生保護法は憲法違反と認めた。しかし、訴えを起こすことができなかった「原告らの心情は、理解できるもの」としながら、除斥期間20年を適用し、「提訴の時点で賠償請求できる権利は消滅している」として原告の請求を棄却した。
1948年から1996年まで存在した旧優生保護法が、「不良な子孫を残さないように」する目的で障害者を社会から排除した。これは日本国憲法の三大原則である基本的人権を無視した施策であり、ろうあ者夫婦を含めた被害者や被害者の家族を今も苦しめ続けている。この旧優生保護法によって、長い間、奪われてきた人権の重みは計り知れない。よって、この判決は決して到底承服することはできない。
1974年頃のろうあ者の生活は、手話そのものが認められず、コミュニケーションを保障する手話通訳制度が存在しなかった。ろうあ者福祉もほとんど皆無であり、ろうあ者の司法アクセスなど考えることも出来ない時代であった。1960年代に始まった、「人間としての権利と生活」を取り戻すろうあ運動の積み重ねと、手話サークルなど聞こえる人たちの献身的な活動により、最近、ろうあ者も司法にアクセスが可能となったのである。
ろうあ者が訴えたくても、訴えることができなかった時代を除斥期間20年の中に含めることを、私たちは受け入れることはできない。
これらのろうあ者が置かれていた時代の背景を考慮しないで、除斥期間を適用することは障害者差別そのものであると認識し、早くとも、2004年に坂口厚労大臣が旧優生保護法による被害を認めたときを除斥期間の起算点とするべきであると考える。
当協会は、大阪地方裁判所に訴訟した二組のろうあ者夫婦、また全国の被害者、その家族、弁護団、支援者とともに、被害者の権利として、国の賠償責任が認められるよう運動を継続する。
2020年12月11日
公益社団法人大阪聴力障害者協会