大阪府立生野聴覚支援学校校長の逮捕に関する声明

 2019年1月25日 公益社団法人大阪聴力障害者協会

 今年1月6日に大阪府立生野聴覚支援学校長が児童買春・児童ポルノ禁止法違反の疑いにより逮捕された。兵庫県警によると、校長は昨年9月29日に、SNSの掲示板を通じて知り合った15歳の少女に1万円を渡し、大阪市北区内のホテルでみだらな行為をしたとされている。

 大阪府立生野聴覚支援学校は1926年(大正15年)の開校以来93年の長きにわたり、大阪府立中央聴覚支援学校(旧・大阪市立ろう学校)とともに、大阪府内の聴覚障害児の学業の場であり続けた。公益社団法人大阪聴力障害者協会の役員・会員にも同校の卒業生が多数おり、皆今回の事件にひどく驚き、やり場のない悲しみと怒りをおぼえている。学校長という現場のトップが、在校生と変わらない年齢の少女に対し買春行為を働いたことは世間を大きくゆるがせ、卒業生はじめ在校生も学校関係者も一様に衝撃をうけている。
 同校は2012年12月には体罰問題が発覚している。この事件も当時は大きく報道され、当会も学校側に面会と再発防止を申し入れた。今回は学校長個人の犯した罪とはいえ、同校のみならず全国の聴覚支援学校・ろう学校の信用と威厳を失墜させるものである。また、大阪府教育庁の同校に対する指導も、体罰事件以後どのようになされていたのか、きちんと継続的な指導があったのか、管理監督責任を問う。

 大阪府では2016年3月に大阪府手話言語条例が施行され、全国で初めて、乳幼児期の手話獲得支援が事業に盛り込まれた。当会が主催し行政と連携して実施する乳幼児期手話獲得支援事業は0~6歳児が対象となるが、6歳以上の子供たちの行く先として、聴覚支援学校の役割・存在意義はたいへん大きい。今回の事件は由々しき事態であり、聴覚支援学校という、聴覚障害児への専門的な教育機関への世間のイメージダウンが避けられないものになった。まして学校長という現場トップの立場にある者が加害者になったという点で、大きく信頼を損なうものであって、当会としても手話言語の普及、ろう教育の発展に対する妨げとならないか、強い危機感を持っている。

 大阪府教育庁は、今後事実関係を確認の上、厳正に対処するとしているが、同校のみならず多くの聴覚支援学校では、幼稚部から中学部まで幅広い年代のろう児・ろう学生が在籍している。また保護者の中にも聴覚支援学校の卒業生がいる。一刻も早く、保護者にとって安心して通わせられる信頼のおける学校になるとともに、在校生にとっても将来、誇りをもって卒業できるように、全校あげて取り組み、大阪府教育庁もしっかりサポートすることを強く求める。

 以上の経緯と課題をふまえ、当会は、大阪府教育庁および大阪府立生野聴覚支援学校に対し、以下の対応を強く求める。

1. 学校長がなぜこのような犯罪に走ったのか、校内での教諭達の勤務体制や労働条件その他の労働環境を把握し、問題があれば改善すること。

 昨今、学校教育の現場は教諭にとって過酷な労働環境であるとの報道もある。学校長にとって過度なストレスがかかるようなことはなかったか、また教諭から在校生に対して、その逆に在校生から教諭に対しての問題行為はおきていないか、今一度確認することを要望するとともに、聴覚障害を持つ教諭が情報保障を含めて働きやすい環境作りを要望する。

2. スクールカウンセラーと連携し、児童生徒が安心して学生生活を送れるようにすること。

 2018年2月、生野聴覚支援学校前でショベルカーによる交通事故があった。その際にスクールカウンセラーが児童生徒の心のケアにあたっている。今回も同様に、スクールカウンセラーが勤務しやすい環境を整えること。

3. 大阪府教育庁は、生野聴覚支援学校に対して、適切な指導と助言を行うこと。

 2012年12月の体罰問題では、翌年1月より当時の大阪府教育委員会が生野聴覚支援学校に対する指導を行っている。今回もしかるべき措置を取り、教職員や在校生が安心して学校生活を送れるようにすることを望むものである。

 以上